茜色の陽光が厳しくなってきた今日この頃、涼やかな赤を飲みたいと思いながら、この一本を開けてみる。 香りの第一印象は、聡明な花だ。控えめでありながら、なぜか気にかかる。その芳香を手繰ってみても、鼻先ですっと姿を消す。その所作は、ずいぶん日本的だ。 「いただきます」 印象が変わる。近づいてみて、むき出しの背中に手を触れた感じがした。スペイン特有の、生々しい味わいが口中に広がる。 ナッツかなあ...... チーズかなあ...... 何かと合わせてみたくなる。そうして夜が更けていく。 決して求めていた涼やかさではない。でも、こんな人情味のある、夏の入りも悪くない。 「ごちそうさまでした」

ジョベーゼ