日がな一日降り続いた雨。憂鬱ではあったが、少し見方を変えてみれば、急に充満した暑気をさっと払ってくれた。 そんな日に、ピノ・ノワールをいただく。 エチケットのくすんだ色合いに時の経過を感じる。紺の色濃さが程よく落ちて、日の長い季節の夜が描かれているように見えるのは、偶然なのだが、僕はそんな偶然が好きだ。 開栓すると、こわごわと辺りの様子を窺う花の香りがする。慎重に存在を吟味しようとする姿勢は、収穫者のそれと似ている。 「いただきます」 涼やかな口当たり。想像をなぞるような、赤ワインならではの立体的な爽快感。 本当に、良い加減だ。 今では「DB」の頭文字でよく見かけるデ・ボルトリのワイン。 高級ではないものでも、時間という価値を経て、上質になる。 そんなことを考えて、一人で口角を上げる。 「ごちそうさまでした」

ジョベーゼ

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