2015 クロー・ド・ネル　IGP デュ・ヴァル・ド・ロワール　シュナン・ブラン　ロワール/フランス 月曜日のワイン。 ダンシング・フレイムのシャルドネを使って仕上げたパスタに合わせたのは、シャルドネではなく、ロワールのシュナン・ブラン。 ドメーヌの所在地はアンジューですがAOP（原産地呼称保護）ワインではなく、一段統制の緩いIGP（地理的表示保護）カテゴリーのワインです。 格付け的には「地酒」にあたるワインですが、背景がなかなか凄いんですよ。 先ずドメーヌそのものは2000年代前半の起業になりますが、天候などに恵まれず、収穫ゼロの年などもあり、すぐに経営破綻してしまいます。 2008年に、ドメーヌ・ルフレーヴの当主だった故アンヌ・クロード・ルフレーヴが買い取り、ブルゴーニュでの経験やノウハウを活かしながら再生させることになります。 この2015年のシュナン・ブランは、2012年に新たに取得した畑に植樹した若樹によるファースト・ヴィンテージのワインです。 2015年は、ドメーヌ再生の象徴的な年であり、シュナン・ブランのエチケットには「復活」のシンボルである不死鳥（ホント？）が描かれたそうです。 しかし同年は、アンヌ・クロードさんが亡くなった年でもあり、「死」と「再生」が交差した、シンボリックでメモリアルなヴィンテージとなりました。 そんな2015年のワインが、2022年の東京の酒屋さんに並んでいるというのも、何とも凄い状況です。 見た瞬間、反射的に瓶を手に取り、レジへ直行しました(笑) さて、バックグランドはここまで。ワインそのものの話に入りましょう！ 全長50ミリのDIAM10の合成コルクを抜き、ワインをグラスへ注ぎます。 バックラベルに「Biodynamique Wine （バイオダイナミック・ワイン）」と英語で記されているように、実は自然派バリバリのワインですね。 グラスは、ラディコングラスを選択しました。 外観は、深みのあるライトゴールド。輝度、透明度ともに高く、蜂蜜の色のような柔らかさを感じる見た目です。 香りは、黄色い林檎や洋梨、花梨などジューシーな黄果実、未熟な桃にある青っぽさ、石灰系の硬いミネラル、白い花、蜂蜜、微かにヴァニラ、仄かに白トリュフ。 全体に弱めで香りの圧は低く微音的ですが、びっくりするような素材の良さを感じます。 口に含むと、キリッとした酸が立ち、やや緩めの果実味とのコントラストが面白いですね。 ミネラルも豊富で、主張の強い酸と良いコンビネーション。 相互補完的、且つ、相乗効果的な組み合わせのように感じます。 雑味はまったく感じられず、非常ピュアで結晶的な硬さと味わいを持ったワインだと思いました。 素晴らしい酸が支配する余韻はおそろしく長く、キュウっと口の中を収斂させたまま、ミネラルの波状攻撃を受け続けているような気分になります。 いや、マジ終わらんよコレ⁉︎ この秀逸なシュナン・ブランに合わせて、シューベルトのピアノソナタ第21番を聴きたくなりました。 候補は3つ。 アルフレッド・ブレンデルの1988年の録音（PHILIPS）、次に1985年に録音されたヴァレリー・アファナシエフのライブ盤（ECM）、そしてシューベルトの生誕200周年である1997年録音の内田光子（PHILIPS）。 いずれも歴史的名盤と言いたい演奏ですが、死と再生をペアリングのテーマと考えた時に、再生の色合いがいちばん濃いように思われた内田盤『シューベルト : ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調、3つの小品（即興曲）D.946』を聴くことにしました。 素晴らしい。こんなに凄い演奏だったのか？ 特に弱音や微音のニュアンスの効かせ方に、このワインの「純粋さ」にも通じる哲学を感じ、心を打たれました。 酸でコーティングされた果実味が、どんどん解されていくワインの味わいの進行と、曲の質感や変化のプロセスが見事に同調していて、ワインと音楽のハーモニーに言葉が出なくなります…。 この曲はシューベルトの、いわゆる「白鳥の歌」と言えるものですが、白鳥が死んでも歌は残り、その美しさを愛する者によって、時を超えて歌い継がれます。 死を超越した不死鳥をシンボルに戴いたワインを飲みながら聴くのに、これほど相応しい曲もないでしょうし、この曲を聴きながら飲むものとして、これ以上に調和するワインも考えられません。 奇跡のように完璧な組み合わせ…ブラヴォー！

iri2618 STOP WARS

メキシコ人の友達の友達に、ワイン好きの音楽家がいて、いずれ音楽とワインのペアリングを出す店をやりたいそうです。それを聞いて真っ先にイリさんのことを思い浮かべました♪

ぺんぺん

いつかうちの店でも志村さんとコラボして「音楽とワインのマリアージュ会」やる予定です(^^)v

Da Masa

買う前からその知識があって購入されたのですか!?すごいです。 IGPクラスにしてちょっとお高めで、知らなければなかなか躊躇してしまいますね。

しみしみ

iri2718さま 先日そう言えばとクロー・ド・ネルを思い出しました。 アンヌ・クロードさん亡くなられたヴィンテージとは何ともです。 アルフレッド・ブレンデルとは懐かしい響きです。 私もシューベルトのピアノ・ソナタ大好きです。結構一つのソナタの演奏時間が長いのですが、その世界に入り込むと旅路に出ている様で一時期ハマってしまいました。 幸運にも内田さんやポリーニのシューベルトのピアノのコンサートに海外で行く事が出来ました。

Marcassin

ぺんぺんさん　コメントありがとうございます。その業態に凄く興味がありますが、商売として成り立ちますかねえ？ 私もチャレンジしてみようかな？(笑)

iri2618 STOP WARS

Da Masaさん　マサさんのお店は、既に実施済みみたいなものでしたね(笑) 以前やった、持ち寄りミュージック&ワイン会とか、BJ会、楽しかったですね♪

iri2618 STOP WARS

しみしみさん　なんとなく「そんなのあったな…」ぐらいの予備知識でしたが、お店のPOPに詳しく書いてありました(笑) そのお店は、飲み頃になるまで熟成させてから店頭に出すお店なので、他では絶対に買えないワインが普通にあったりするんですよ！

iri2618 STOP WARS

Marcassinさん　コメントありがとうございます。まさかのファースト・ヴィンテージでした(๑˃̵ᴗ˂̵) ルフレーヴのワインとはすっかり縁遠くなってしまいましたので、こういう形で生前のアンヌ・クロードさんがかかわったワインを飲めるとはラッキーでした。 3っつの候補に挙げた演奏の中では、圧倒的にアファナシエフのアルバムが好きなのですが、このワインとのペアリングは内田盤が最高でした♪ 私は、ブレンデルは生で聴いたことがありませんが、内田とアファナシエフは、それぞれモーツァルトを中心にしたプログラムを東京で体験したことがあります。かなり前のことなので、記憶が定かではないのですが、休憩時間に立ち飲みでワインを飲んだなぁ…ということを唐突に思い出しました(笑) 内田の時はスパークリングワイン（シャンパーニュ？）で、アファナシエフの時は赤ワインでした(*_*)

iri2618 STOP WARS

クラシックはあまり聴かないのですが、内田光子さんは好きでサントリーホールに2回、松本に1回聴きに行きました(^^) アンヌ・クロード・ルフレーヴさんのこのようなワインがあるのは知りませんでした！！ 是非飲んでみたいです♫

Yuji♪☆

シューベルトのピアノソナタ第21番ですか…。 私が聴こうと思って取り出すのは、リヒテル、アラウ、アファナシエフ（後年の録音）ですが…。 一年に一回くらいしか、この曲を聴けるようなメンタルにはならないです…。 シューベルトの後の方の曲ってなんだか凄いですよね^^;

bacchanale

Yuji♪☆さん　コメントありがとうございます。私も内田光子はサントリーホールで聴きました。ちなみに、アファナシエフは浜離宮朝日ホールでした。アンヌ・クロードさん のロワールワインを飲むのは私も初めてでした。とても良いワインだと思います♪

iri2618 STOP WARS

bacchanaleさん シューベルトのピアノソナタは、確かに聴くための気力・体力が必要かもしれませんね♪ ただ アファナシエフの最初の録音は、喜怒哀楽のどんな感情にも寄り添ってくれる、素晴らしい演奏だと思っていて、あらゆるタイミングで聴いています。ブレンデルはかなり個性的で、ほとんど聴かなくなりましたが、内田盤は、これを機に聴き込んでみようと思いました。えーっとワインの話は…ま、いっか(笑)

iri2618 STOP WARS