Like!:76
4.5
白ワイン最後はプルミエ・クリュのムルソーでした。調べてみるとブルゴーニュのAOCの中で、そのAOCのワインの特徴だと広く信じられているスタイルが、実際はその土地のテロワールをほとんど反映していないというところがあるでしょうか? あります。ムルソーがそうです。 あのこってりとしたバターの風味は、樽香の付け過ぎ以外にどんな理由があるというのでしょうか。かようなスタイルのワインをいつ、誰が造りはじめたかは分りませんが、一昔前の世界的な濃いワインへの期待にも見事に応え、気がついてみればムルソーはブルゴーニュ有数の裕福な村として、コート・ド・ボーヌに君臨することとなりました。 この村には約80軒のドメーヌがあり、そのほぼすべてを把握済みですが、本来のムルソーのテロワールの表現を志向するドメーヌは、私見では皆無に等しいのが現状です。 インテリア・デザイナーという部外者として参入し、あらゆるしがらみに捉われることなく自らの感性に基づいてエレガントなムルソーを造っていたクロディーヌ・ルッセル女史(マトロ・ウィッターシェイム)がドメーヌを閉めた今、もうムルソーのドメーヌを扱うことはないと思っていました。 しかし、ひとりいたのです。ムルソーに長く続くヴィニュロンの家系の末裔という「当事者」でありながら、ムルソーの純粋なテロワールを生かした美味しいワインを造ろうと努力を重ねてきた、真面目な青年が。 2003年にビュイソン・バトーを訪問した時のメモには、「他のどのムルソーとも違う、極めて個性的な味わい」とあり、今にして思えばこの時試飲したワインが、お父さんの遺作でした。 「父も僕も、樽香が大嫌いです。一口目は美味しいと思うこともありますが、すぐに飲み疲れてしまいますし、まして2杯目を飲もうとは思いません。料理に合わせたら尚更です。」 「ムルソーの特徴は、美しいミネラルにある」というのが、父の口癖でした。ただ父は、10年後、20年後にようやく飲み頃になるワインを理想としており、若いうちはかなり個性的な味がしていました。僕は、若いうちからみずみずしくエレガントで、かつ、10年後、20年後も美味しく楽しめるワインを造りたいと思いました」(フランソワ・ビュイソン)。 彼は2005年以降、より広く清潔な醸造所へ移転すると同時に、収穫から破砕までのシステムやプレス機、フィルター等をがらりと入れ替え、バトナージュを極力控えたシュール・リーによる熟成といった醸造上の改革を行い、ここに、新世代による本当の「ムルソー」が誕生しました。 「でも何より大切なのは、畑を深く耕すことです。そうすれば除草剤も殺虫剤も必要ありませんし、土中のミネラルを十分に取り入れることができます。若いうちのみずみずしさの決め手になるのはミネラルで、長期熟成の鍵になるのもミネラルです。ここは、なんという恵まれたテロワールなんだろう」。1.38ha。平均樹齢45〜50年のVV。新樽20%、1〜5回使用樽80%で12ヶ月間熟成後、タンクで6ヶ月間熟成。 ムルソー1級畑「レ・グット・ドール」についてマット・クレイマー氏は「いみじくも『黄金のしずく』と名づけられたこの畑は、ムルソーの偉大な一級めぐりの最終着駅になぞらえるのがふさわしい。ここより斜面は急勾配となり、グット・ドールをのぼる道はほとんど弧をえがくようだ。日照は決定的な役割をもち、勾配が標高をうめあわせている。グット・ドールは一団のムルソーのなかで、最も繊細なあやにとぼしいが(トマス・ジェファーズンさん失礼します)、濃厚な味わいは強く、わかりやすいもので、精妙なシャルム、洗練されたブシェールのよさはない。が、豊かな味わいはさがし求めるに値するものだ。」とのこと。やっぱりムルソーのまったりコッテリが好きなのでこのワインが白の中では一番だったかな… プルミエ・クリュの飲み比べ よく考えれば贅沢ですよね…
gucci5779
Vinica アプリ 無料ワインを探す・記録・SNS
使い方・機能紹介を見る
白ワイン最後はプルミエ・クリュのムルソーでした。調べてみるとブルゴーニュのAOCの中で、そのAOCのワインの特徴だと広く信じられているスタイルが、実際はその土地のテロワールをほとんど反映していないというところがあるでしょうか? あります。ムルソーがそうです。 あのこってりとしたバターの風味は、樽香の付け過ぎ以外にどんな理由があるというのでしょうか。かようなスタイルのワインをいつ、誰が造りはじめたかは分りませんが、一昔前の世界的な濃いワインへの期待にも見事に応え、気がついてみればムルソーはブルゴーニュ有数の裕福な村として、コート・ド・ボーヌに君臨することとなりました。 この村には約80軒のドメーヌがあり、そのほぼすべてを把握済みですが、本来のムルソーのテロワールの表現を志向するドメーヌは、私見では皆無に等しいのが現状です。 インテリア・デザイナーという部外者として参入し、あらゆるしがらみに捉われることなく自らの感性に基づいてエレガントなムルソーを造っていたクロディーヌ・ルッセル女史(マトロ・ウィッターシェイム)がドメーヌを閉めた今、もうムルソーのドメーヌを扱うことはないと思っていました。 しかし、ひとりいたのです。ムルソーに長く続くヴィニュロンの家系の末裔という「当事者」でありながら、ムルソーの純粋なテロワールを生かした美味しいワインを造ろうと努力を重ねてきた、真面目な青年が。 2003年にビュイソン・バトーを訪問した時のメモには、「他のどのムルソーとも違う、極めて個性的な味わい」とあり、今にして思えばこの時試飲したワインが、お父さんの遺作でした。 「父も僕も、樽香が大嫌いです。一口目は美味しいと思うこともありますが、すぐに飲み疲れてしまいますし、まして2杯目を飲もうとは思いません。料理に合わせたら尚更です。」 「ムルソーの特徴は、美しいミネラルにある」というのが、父の口癖でした。ただ父は、10年後、20年後にようやく飲み頃になるワインを理想としており、若いうちはかなり個性的な味がしていました。僕は、若いうちからみずみずしくエレガントで、かつ、10年後、20年後も美味しく楽しめるワインを造りたいと思いました」(フランソワ・ビュイソン)。 彼は2005年以降、より広く清潔な醸造所へ移転すると同時に、収穫から破砕までのシステムやプレス機、フィルター等をがらりと入れ替え、バトナージュを極力控えたシュール・リーによる熟成といった醸造上の改革を行い、ここに、新世代による本当の「ムルソー」が誕生しました。 「でも何より大切なのは、畑を深く耕すことです。そうすれば除草剤も殺虫剤も必要ありませんし、土中のミネラルを十分に取り入れることができます。若いうちのみずみずしさの決め手になるのはミネラルで、長期熟成の鍵になるのもミネラルです。ここは、なんという恵まれたテロワールなんだろう」。1.38ha。平均樹齢45〜50年のVV。新樽20%、1〜5回使用樽80%で12ヶ月間熟成後、タンクで6ヶ月間熟成。 ムルソー1級畑「レ・グット・ドール」についてマット・クレイマー氏は「いみじくも『黄金のしずく』と名づけられたこの畑は、ムルソーの偉大な一級めぐりの最終着駅になぞらえるのがふさわしい。ここより斜面は急勾配となり、グット・ドールをのぼる道はほとんど弧をえがくようだ。日照は決定的な役割をもち、勾配が標高をうめあわせている。グット・ドールは一団のムルソーのなかで、最も繊細なあやにとぼしいが(トマス・ジェファーズンさん失礼します)、濃厚な味わいは強く、わかりやすいもので、精妙なシャルム、洗練されたブシェールのよさはない。が、豊かな味わいはさがし求めるに値するものだ。」とのこと。やっぱりムルソーのまったりコッテリが好きなのでこのワインが白の中では一番だったかな… プルミエ・クリュの飲み比べ よく考えれば贅沢ですよね…
gucci5779