『No.936 己の道を突き進む』 今夜は常夜鍋よ…と妻は言った。常夜鍋は豚バラスライスとほうれん草もしくは小松菜をポン酢で味わうシンプルな鍋。僕は好物なので楽しみにしながら風呂を済ませた。 いざ出来上がりを見ると…糸こんにゃくやらキノコやらウインナーに豆腐と、妙に具沢山。あれもこれもとついつい入れてしまったらしい。 これ寄せ鍋じゃん…まぁいいけど。 そんな今夜の夕飯のメニューは… ・寄せ鍋 ・刺身(サーモン・カンパチ・ヒラメ・マグロ) そして今夜はドイツはフランケンのツヴァイ・ナトゥキンダー、バッカス・ペットナットNV(2017・2018)をお供に。バッカス100％のペットナット。寄せ鍋に合うかな。ちなみに鍋は出汁で下味。そしてポン酢で。 王冠を慎重に抜栓し、グラスに注ぐ。吹きこぼれ無し！これだけで評価は高い。グラスに注ぐと少し強めのガス感、そして濁り強めの黄金色。香りの方は軽く柑橘、そして少し桃っぽい甘い香り。そして一口…あっ、なんだかナチュラル…というより、少々プリミティブな感じ。強めの酸味と、キメは細かいが少し強い目のガス感。デパ地下のジューススタンド的な雰囲気を醸し出す果実味。厚みを感じる旨味とミネラル感。整ってるというよりは、素朴なばらけ感。網目の荒いセーターのよう。だが、この素朴な感じが妙に気になり、杯を重ねるごとに愛おしさすら感じさせてくれる。 この荒さや骨太な感じ…いいじゃない。 鍋にも合う。豚肉にも、ほうれん草にも、糸こんにも。当たり前だがウインナーにもあう。刺身ともけんかすることなく仲良し。脂ののったサーモンやカンパチなんか最高。強い酸味も骨太なミネラル感も飲み進めてくと、気にならなくなる…というか当たり前になってくる感じかな。食べてくとついつい一口…気がつくとまたグラスに注ぎ、ついつい一口。危険なメビウスの輪状態。飲みすぎ注意、食べすぎ注意！ ちょっとした雑味(鉄や茎的要素)ももろともせず、持ち味の旨味と果実味とミネラル感で、己の道を突き進むペットナット。ごちそうさまでした。

カリヤカ・ズノリ